【連載:イケメン蔵元】5代目蔵元が描く夢 日本一の「発酵屋」になりたい!

日本酒はエンターテインメントだ!

 「お待たせしました」

 部屋の奥からあらわれたのは、紬(つむぎ)の着物をまとった本田龍祐さん。『龍力』(たつりき)を醸す本田商店(兵庫県)の専務である。

 まるで自分の肌の一部のように着物が似合う。取材スタッフの女性からも歓声が上がるほど、その出で立ちは凛として「カッコイイ」の一言。こうなるとカメラマンがシャッターを押す回数が、いつも以上に増える。「播州の伊達男、ここにあり」である。

 本田商店が蔵を構える地域(兵庫県姫路市網干区)は台風も少なく、年間を通して穏やかな気候で、奈良時代初期の書物『播磨風土記』に「ここは楽園だった」と書かれるほど。そんな楽園のような場所で、蔵の5代目としてすくすくと育った本田さんは、とことん柔軟な考えの持ち主である。

 「日本酒をはじめとする酒って、エンターテインメントだと思うんですよ。着物だってそう。わくわくして、楽しくなくちゃね。たとえて言うなら旭山動物園※1。ただ動物を展示するのではなく、その特徴や性質を把握し、動物にもストレスがない形で行動パターンをわかりやすく伝えて、楽しんで見てもらう。これって、実は日本酒にも通じることなんですよね」

 本田さんが特にこだわるのは「わかりやすく」という点。初めて日本酒を飲む人にとって、日本酒は非常にわかりにくい。例えば純米大吟醸、本醸造といった名称は、ビギナーにとって何が違うのか理解できない。

 「昔の日本酒は特級、1級、2級というカテゴリーだけで、誰が見ても『これが一番高級なんだな』と認識できたんです。でも細かく区分された今、知識がないと選ぶことすら大変。僕としては①プレミアム、②マニアック、③ローカルと三つのカテゴリーでいいんじゃないかなと。わかりやすいほうが手にしやすいし、気軽に楽しめますよね」

 ここでちょっと本田さんが言う三つのカテゴリーを説明しよう。①「プレミアム」は大吟醸酒や吟醸酒をはじめとする透明感のある高価な酒、②「マニアック」は使用する米の個性が売りの純米酒、そして③「ローカル」は蔵がある地域で昔から愛されてきたデイリーな本醸造酒を指す。なるほど、これなら日本酒ビギナーでもわかりやすいし、選ぶのも簡単だ。

 「酵母がなんちゃらとか、難しい話をしても日本酒のおいしさは伝わらないと僕は思ってます。難しい話はプロに任せて、まずは日本酒を楽しんで欲しいですね」

※1: 旭山動物園とは
北海道旭川市にある動物園。自然との共生をテーマとした「行動展示」を行っており、人気が高い。

グラスを見つめる本田さん

日本酒をわかりやすく、そして楽しく

 「日本酒をわかりやすく」――そんな本田さんの思いを形にしたのが、彼がプロデュースした『龍力』のドラゴン・シリーズだ。

 5種類あるドラゴン・シリーズはラベルやボトルを見て、一目でコンセプトがわかるようになっている。例えばブルーのボトルが涼しげな『大吟醸 ドラゴン Episode1』は冷やしておいしい酒、またポップな4色のラベルの『純米酒 ドラゴン Episode3』はフルーティで四季を通じて飲んで欲しい酒といった具合である。

 「日本人に伝わらないものは、外国人にも伝わらない」と本田さん。見た目にもわかりやすいドラゴン・シリーズは、日本酒ビギナーはもちろん、日本酒になじみがない外国人にも伝わりやすい。

龍力ボトルの写真

のれん前で本田さん

 では一体、本田さんのこうしたアイデアは一体どこから来るのだろう? 本田さんは「コンビニかな?」とクスっと笑う。

 「コンビニに行くと時代の流れが一目でわかりますよね。スイーツなんて、まさにそう。売れている商品からインスパイアされることも多いです。あとは本、マンガ、映画。とにかく何でも読むし、観ます。アウトドア派に見えるかもしれませんが、実はインドア派なんですよ」

 インドア派と言いつつ、知識欲旺盛でフットワークが軽い本田さんは、新しい挑戦をするのがとにかく好き。そういえば、本田商店は今から40年前に国内初の生酒を期間限定で出したことでも有名。また30年前に自社に精米機を導入し、扁平精米※2(へんぺいせいまい)をおこなった蔵でもある。新しいことに次々と挑戦する本田さんの柔軟さは、こうしたベースがあるのだ。そんな本田さんの夢を聞いてみた。

 「僕ね、“発酵屋”になりたいんですよ。日本酒だけでなく、ワインも造ってみたい。地域の人が『本田商店に素材を持っていったら、何でも発酵させてくれるよ』と言われるくらい、発酵に挑戦してみたいですね。こうやって思いつくことは、基本的に実現できると思うんですよ」

 難しいことを簡単に、そして思いを形に。そうしたことがスマートにできる本田さんなら、肩肘張らず、さらりと実現してしまうに違いない。それもそう遠くない未来に。

※2: 扁平精米とは
米を単に丸く削るのではなく、米のどの部分も同じ厚さになるよう、扁平型に精米する方法。中心部分のでんぷんはしっかり残し、米の周りに多く含まれる脂質やタンパク質といった余分な部分を効果的に除去する。

蔵内にある扁平精米機

屋上で遠くを見る本田さん

酒蔵紹介

株式会社 本田商店
兵庫県姫路市網干区高田361-1
079-273-0151
問い合わせ先:info@taturiki.com
代表銘柄:龍力 大吟醸 米のささやき
     龍力 Dragon Series

酒蔵見学
2月~3月中旬限定まで。電話、メールにてお問い合わせくださいませ。

イケメン蔵元紹介

軒下にたつ本田さん

寝姿の本田さん

本田龍祐さん(専務取締役 五代目蔵元)
交際ステータス<2019年2月時点>:既婚

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